人材紹介業の開業条件とは?有料職業紹介の許可申請・費用・事務所要件を解説

カテゴリー: 起業・独立ノウハウ

公開日:2026.09.18 / 更新日:2026.09.21

記事要約

人材紹介業(有料職業紹介事業)を始めるには、厚生労働大臣の許可が必要です。開業前に確認しておきたいポイントは次のとおりです。

お金の条件

  • 基準資産額:500万円 × 事業所数 以上
  • 自己名義の現金・預貯金:150万円 +(60万円 ×(事業所数 − 1))以上
  • 1事業所なら、基準資産額500万円以上+現金・預貯金150万円以上
  • 基準資産額は決算書の貸借対照表で判断されます

人の条件

  • 事業所ごとに専属の職業紹介責任者が必要(法人の役員、個人の場合は本人でも可)
  • 成年に達した後3年以上の職業経験があること
  • 申請の受理日前5年以内に職業紹介責任者講習を修了していること

事務所の条件

  • 風俗営業等が密集するなど、事業の運営に好ましくない場所でないこと
  • 個室やパーティション等でプライバシーを保護できる構造が原則
  • 予約制・近隣の貸部屋の確保などの措置、またはオンライン完結での運営でも可

費用

  • 登録免許税9万円 + 許可申請手数料5万円(1事業所の場合、合計14万円)
  • 2事業所目以降は手数料が1万8千円ずつ加算されます

期間

  • 書類が揃った申請から許可まで、概ね3か月程度
  • 労働局では、事業開始予定時期の約3か月前までの申請が案内されています
  • これとは別に、事務所探し・講習受講・書類準備の期間が必要です

事務所は「住所があればよい」わけではありません

法人登記ができる住所を確保するだけでは足りず、上記の位置・構造の基準を満たす必要があります。契約後に基準を満たしていないことが分かると、見直しが必要になる場合もあるため、物件選びの段階での確認が重要です。

レンタルオフィスやシェアオフィスでの開業も可能です。確認すべき点は別の記事でご紹介しています。

人材紹介業の事務所要件とは?レンタルオフィスで開業できる条件を解説

はじめに

一般に「人材紹介業」と呼ばれる事業のうち、求人者と求職者の間の雇用関係の成立をあっせんし、手数料や報酬を受けて行うものが「有料職業紹介事業」です。この事業を行うには、職業安定法にもとづく厚生労働大臣の許可が必要になります。

会社を設立すればすぐに始められるものではなく、資産や人員、事務所について定められた基準を満たしたうえで、労働局を経由して申請を行うことになります。

「何を準備すればいいのか」「どれくらいの期間と費用がかかるのか」。開業を検討し始めた段階では、全体像がつかみにくいものです。ここでは、有料職業紹介事業を始めるために必要な条件と、許可申請の流れを整理してご紹介します。

なお、実際の申請にあたっては個別の事情によって判断が分かれる部分もありますので、詳細は管轄の都道府県労働局にご確認ください。

許可を受けるために満たすべき基準

許可基準は、職業安定法第31条第1項に定められた3つの要件を軸に構成されています。

  • 財産的基礎に関する要件:事業を健全に遂行するに足りる財産的基礎を有すること
  • 個人情報に関する要件:個人情報を適正に管理し、求人者・求職者等の秘密を守るために必要な措置が講じられていること
  • 事業遂行能力に関する要件:代表者・役員、職業紹介責任者、事業所、適正な事業運営のそれぞれについて基準を満たすこと

このうち3つ目の「適正な事業運営」には、業務の運営に関する規程を定めていること、適法な手数料以外に金品を徴収しないこと、徴収する手数料を明らかにした手数料表を有すること、名義貸しでないことなども含まれます。

このほか、代表者・役員が欠格事由に該当しないことも前提です。拘禁刑以上の刑に処せられた場合や、一定の労働関係法令違反により罰金の刑に処せられ、その執行を終えてから5年を経過していない場合などが該当します。

なお、許可は法人・個人のどちらでも申請できます。

財産的基礎に関する条件

次の2つの基準を満たす必要があります。

① 基準資産額
500万円 × 事業所数 以上
資産の総額から繰延資産と営業権(のれん)を除いたうえで、負債の総額を差し引いて算出します。
② 自己名義の現金・預貯金
150万円 +(60万円 ×(事業所数 − 1))以上
事業開始後3か月程度の運営を賄うための「事業資金」として位置づけられており、現金または預貯金として所持するものに限られます。

事業所が1か所であれば、基準資産額500万円以上、現金・預貯金150万円以上が必要ということになります。2か所目以降は、基準資産額が500万円ずつ、現金・預貯金が60万円ずつ加算されます。

「現金で500万円あればいい」ではありません
基準資産額は決算書の貸借対照表で判断されます。手元や口座に現金が500万円あればよいというものではなく、資本金の額そのもので判断されるわけでもありません。借入金は負債として差し引かれるため、資本金が十分でも基準を満たさないことがあります。

なお、法人設立後まだ最初の決算期を終えていない場合は、会社成立時の貸借対照表で判断されます。また資産は常に基準額以上を保っている必要はなく、新規の許可申請時または更新申請時に満たしていれば足りるとされています。

職業紹介責任者に関する条件

事業所ごとに、その事業所に専属の職業紹介責任者を、自己の雇用する労働者の中から選任する必要があります。ただし、法人の場合はその役員、個人の場合は本人が職業紹介責任者となることも認められています。

選任する人数

事業所において職業紹介に係る業務に従事する者の数に応じて決まります。

職業紹介の業務に従事する者の数 必要な職業紹介責任者の数
50人以下 1人以上
50人超100人以下 2人以上
100人超 50人を超える50人ごとに1人を2人に加えた数以上

一人で開業する場合は1人で足ります。

職業紹介責任者になるための要件

労働関係法令に関する知識および職業紹介事業に関連する経験を有する者であることを前提に、次の要件を満たす必要があります。

  • 成年に達した後3年以上の職業経験を有すること
  • 申請の受理日前5年以内に職業紹介責任者講習を修了していること
  • 精神の機能の障害により、職業紹介責任者の業務を適正に行うにあたって必要な認知・判断・意思疎通を適切に行うことができない者でないこと

あわせて、未成年者でないこと、欠格事由に該当しないことも必要です。

職業経験3年の要件があるため、社会人経験の浅い方が自ら責任者となって開業することはできません。また講習の有効期間は「申請受理日前5年以内」なので、以前に受講したことがある場合でも期間内かどうかの確認が必要です。

講習は複数の団体で実施されていますが、日程が限られていることもあります。開業スケジュールを組む際は、早めに予定を確認しておくと安心です。

個人情報の管理と規程類の整備

求職者等の個人情報を適正に管理するため、個人情報適正管理規程を定める必要があります。この規程には、個人情報を取り扱う職員の範囲が明確にされていること、業務以外の目的での使用や漏えいを防ぐ職員教育が実施されていること、本人から求められた場合の開示・訂正の取扱いに関する規定があり周知されていること、苦情処理の体制が明確にされていることを含めます。

あわせて、業務の運営に関する規程も必要です。職業選択の自由、均等待遇、労働条件等の明示、求職者等の個人情報の取扱い、手数料など、職業安定法の各条文の内容を含んだものであることが求められます。なお、この規程は個人情報適正管理規程と一体のものとしても差し支えないとされています。

さらに、徴収する手数料を明らかにした手数料表も必要です。これらの様式例は労働局のホームページで公開されているものを参考に作成できます。

事務所に関する条件

事業所は、位置・構造・設備・面積からみて職業紹介事業を行うのに適切であることが求められます。

位置について

風俗営業や性風俗関連特殊営業等が密集するなど、職業紹介事業の運営に好ましくない場所にないことが必要です。

構造について

原則として、次の構造を備えていることが求められます。

個室の設置やパーティション等での区分により、プライバシーを保護しつつ求人者・求職者に対応できる構造を有すること

ただし、この構造に代えて、次のいずれかによっても要件を満たすものと認められます。

予約制や近隣の貸部屋の確保等により、他の求人者・求職者と同室にならずに対面の職業紹介を行える措置を講じる
専らインターネットを利用するなどして、対面を伴わない職業紹介を行う
(当分の間)事業所の面積がおおむね20平方メートル以上であること

つまり、個室でなければ許可されないというわけではなく、複数の対応方法が認められています。

代替措置を選んだ場合の注意点
その措置を講じない運営がなされたときには、許可の取消し対象となる旨の条件が付されます。申請時に申告した運営方法を実際に守ることが前提になります。

レンタルオフィスを利用して開業することも可能ですが、単に住所を確保できればよいわけではありません。契約前に許可基準を満たせるかを確認しておくことが重要です。

許可申請にかかる費用

費目 金額
登録免許税 許可1件あたり9万円
許可申請手数料 5万円(収入印紙)+ 1万8千円 ×(事業所数 − 1)

事業所が1か所であれば、合わせて14万円が目安です。2か所なら15万8千円、3か所なら17万6千円という計算になります。

なお、許可申請手数料については、申請書が受理され収入印紙が消印された後は返還されません。

このほか、申請手続きを社会保険労務士などに依頼する場合は、別途報酬が必要になります。

許可申請の流れ

許可基準を満たせるか確認する
資産、人員、事務所、規程類のそれぞれについて確認します。特に資産要件と事務所要件は後から変更するのが難しいため、早い段階で見通しを立てておくことをおすすめします。申請前に労働局へ事前相談をしておくと、認識の食い違いを防げます。
職業紹介責任者講習を受講する
申請受理日前5年以内の修了が条件です。受講証明書は申請書類として提出します。
許可基準を満たす事務所を選定・確保する
物件を探す段階から、位置と構造の基準を満たせるかを確認します。申請には賃貸借契約書などの書類が必要になるため、契約から申請までにある程度の期間を見ておく必要があります。
申請書類を準備する
許可申請書、事業計画書、手数料表のほか、定款、登記事項証明書、役員の住民票・履歴書、決算書類、納税証明書、事務所の使用権を証明する書類、事業所のレイアウト図および写真など、多くの書類が必要です。
定款および登記事項証明書については、その目的の中に有料職業紹介事業を行う旨の記載が必要です。記載がない場合は、申請前に目的変更の手続きが必要になります。
労働局へ申請する
事業主の主たる事務所の所在地を管轄する都道府県労働局を経由して、厚生労働大臣に申請します。窓口は混み合うことが多いため、事前予約を求めている労働局もあります。
審査
提出書類の審査のほか、事業所に関する確認が行われます。許可は、労働局および厚生労働省における審査と、労働政策審議会への諮問を経て決定されます。
許可証の交付
審査を経て、厚生労働大臣名の許可証が交付されます。事業内容によっては、許可にあたって一定の条件が付されることがあります。

開業までに必要な期間の目安

必要書類がすべて揃った申請書類を提出してから許可が下りるまでは、概ね3か月程度とされています。労働局では、事業開始予定時期の約3か月前までに申請するよう案内されています。

これに加えて、事務所探し、講習の受講、書類準備の期間も必要になります。書類に不備があるとさらに時間がかかるため、開業予定日から逆算して、余裕を持ったスケジュールを組んでおくことが大切です。

許可の有効期間と更新

許可を取得した後も、期限があります。

区分 有効期間
新規許可 許可の日から3年
更新後 有効期間が満了する日の翌日から5年

更新申請は、有効期間が満了する日の3か月前までに行う必要があります。更新の際にも許可手数料(1万8千円×事業所数)が必要です。

なお、更新時の資産要件は新規許可時より緩和されており、基準資産額は500万円ではなく350万円×事業所数で判断され、現金・預貯金の要件は適用されません。

また、毎年度の事業報告書の提出義務があるほか、職業紹介責任者や事業所の変更があった場合には届出が必要です。

事務所は開業スケジュールを左右します

ここまで見てきたとおり、許可申請には賃貸借契約書や事業所のレイアウト図、写真が必要です。つまり、事務所が決まらなければ申請書類が揃わず、申請そのものを始められません。

一般の賃貸オフィスは契約から入居までに時間がかかることも多く、その分だけ開業時期が後ろにずれていきます。レンタルオフィスやシェアオフィスは比較的短期間で利用を開始できるため、準備期間を短くしたい場合の選択肢になります。

ただし、どの物件でも基準を満たせるわけではありません。何を確認すべきかについては、別の記事で詳しくご紹介しています。

人材紹介業の事務所要件とは?レンタルオフィスで開業できる条件を解説

まとめ

有料職業紹介事業を始めるには、財産的基礎・個人情報管理・事業遂行能力のそれぞれについて基準を満たし、労働局を経由して許可を取得する必要があります。申請から許可まで概ね3か月程度かかるため、早めに全体像を把握して準備を進めることが大切です。

ここでご紹介した内容は一般的な情報です。実際の申請にあたっては個別の事情によって判断が異なる場合がありますので、詳細は管轄の都道府県労働局にご確認ください。


参考

公開日:2026.09.18 / 更新日:2026.09.21